蝸牛の歩み

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自転車の歩道における歩行者との事故について

通勤や買い物などに日常的に自転車を利用しているので、以下のニュースは人ごとではない。

 自転車の車道走行ルールを厳格化するため道路交通法が改正された07年以降、自転車で歩行者をはねて死亡させたり重傷を負わせた場合、民事訴訟で数百万〜5000万円超の高額賠償を命じる判決が相次いでいることが分かった。これと並行して東京や大阪など主要4地裁の交通事故専門の裁判官は今年3月、「歩道上の事故は原則、歩行者に過失はない」とする「新基準」を提示した。高額賠償判決がさらに広がるのは必至の情勢となる一方、車道走行ルールが浸透していない現状もあり、今後議論を呼びそうだ。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100821k0000m040119000c.html

ただ、この記事には引っかかる点がいくつかある。

まず、「自転車の車道走行ルールを厳格化するため道路交通法が改正された07年」という部分。自転車の車道走行ルールに関して道路交通法が施行されたのは、2008年である。ところが記事中の例としては2007年の例が3件挙げられている。公布は2007年だったが*1、施行されていない段階では高額賠償と道路交通法の改正を結びつけるのは無理がある。

それから、車道走行ルールが厳格化されたというのもおかしい。改正前は、自転車通行可と標識等で指定されている場所以外は歩道を通行することはできず、車道を通行しなければならなかった。それが改正によって、運転者が児童・幼児の場合および車道を走行するのが危険な場合は歩道を通行することができるようになった。つまり、厳格化されたどころか、条件が緩和されているのだ。

さて、記事の伝えている歩行者の過失を認めないという点についてだが、「(歩道において自転車は)歩行者の安全に注意する義務がある」というのはその通りであって、事故を起こしたらその義務を怠ったという過失が自転車にあるということになる。また、「事故の責任は原則、自転車運転者に負わせるべきだ」というのも、まあそうかなと思う。しかし、歩行者の過失を認めず、全責任を自転車に負わせるべきだとは思はない。

道路交通法第10条で歩行者は「普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならない」と定められているので、それを守っていなかった場合は過失を認めてもいいのではないか。また、第13条で「歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない」とも定められている。自転車は車両だし、歩道も道路の一部だから、この適用を受ける。つまり、歩行者が自転車の前に飛び出した場合は、道路交通法に違反しているのであって、歩行者といえども過失とすべきだと思う。

*1:「07年の道交法改正(施行は08年)」と記事中に書かれている。