蝸牛の歩み

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貝類のフタは革質か角質か

貝類の多くはフタを持っている。サザエのように石灰質のフタを持っているグループのほかに、タニシのように茶色っぽくて比較的薄い、弾力のあるフタを持つグループがいる。このフタのことを、「角質のフタ」と言ったり、「革質のフタ」と言ったりする。どちらが正しいのだろう。この疑問は、カタツムリ展のときだったか以前調べたことがあるのだが、今回調べ直したら新たなことがわかったので備忘録として書き残しておく。

貝類のフタは何かというと……英語版wikipediaの「Operculum (gastropod)」によると corneous だという。リーダーズによると、corneousの翻訳は「角質」。日本語の文献で「角質」という用語が使われるのは、翻訳が元かもしれない。「角質」というのは、wikipediaや生物学事典によるとケラチンのことである(wikipedia:角質)。ケラチンとは硬タンパク質の一種。

ところが、wikipediacorneous を見ると、違うことが書いてある。哺乳類では普通ケラチンだというのはいいとして、それ以外に巻貝のフタを記述するのに使われるという。巻貝のフタの場合は、"Corneous opercula are made out of the protein conchiolin." コンキオリン(wikipedia:コンキオリン)というタンパク質でできているという。角質(ケラチン)じゃないのだ!

もっとも広辞苑では「角質」は、「1.生物体を被う、特に硬質な外被、およびその変形物。クチクラなどの分泌、細胞の角質化により形成され、内部を保護する。ケラチン・コラーゲン・フィブロインなどの硬蛋白質が主成分。2.無脊椎動物の石灰質でない殻の成分。」と少し異なる説明になっている。この意味であれば、巻貝のフタは角質であると言えそうだ。しかし、ケラチンと間違われる可能性があるので不適切だと思う。

「革質」というのは、wikipediaや生物学事典には項目がなく、広辞苑によると「 植物の表皮などの、革のようにかたい性質。」こちらは、成分ではなくて性質を言っているらしい。この意味でも、巻貝のフタは革質であると言っても間違っていないようだ。

日本語の文献として、佐々木 猛智さんの「貝類学」を見ると、p.159に蓋という項目があり、次ページに「多くの蓋は有機質であるが、石灰化するグループがある」という記述がある。なるほど、有機質と書けば間違いはないだろう。

今調べた範囲では、巻貝のフタは革質とか角質と言っても間違いではないかもしれないが、有機質と言うのが良さそうだ。もし、もっと詳しく成分を言う場合には「コンキオリン」というタンパク質でできている、と言うのが正確なんじゃないかと思う。