蝸牛の歩み

蝸牛の如く,ゆっくりでも着実に前へ・・・

カタツムリ・マイマイ・デンデンムシの語源に関する覚え書き

柳田国男の「蝸牛考」より。

蝸牛考 (岩波文庫 青 138-7)

蝸牛考 (岩波文庫 青 138-7)

現在、陸産貝類のことを標準語ではカタツムリと呼ぶことが多いが、この本によると「東京の蝸牛は現在はマイマイツブロ、京都ではデンデンムシが標準語のごとく見られている」と書かれている。デンデンムシの方は文部省唱歌「かたつむり」の歌詞にも出てくるため、現在では全国的に通用する俗称となっていると思われるが、マイマイツブロというのは聞いたことがない。東京では使われているのだろうか?

では、本題のカタツムリ・マイマイ・デンデンムシの語源を、この本から拾い出してみる。

タツムリ
  • 承平年間 (931年 - 938年) の「倭名鈔」に「加太豆不利(かたつぶり)」。
  • カサツブラから転訛したもの。「カサ」は「笠に似た貝、笠を着た虫」という意味。近世の編笠ができるまでは、一筋の縫糸を螺旋させて縫って作っており、蝸牛の貝をよく形容している。
  • ツブリ・ツブロは「ツブラ」すなわち丸いことと関連している。
  • 錘(つむ)に似ているからツムリだという語原説は怪しいもの。
  • 「和訓栞」には「偏角振(かたつのふり)の義なるべし」とあるが、「実に思い遣りのない独りぎめ」。
  • 「物類称呼」の「雨の降る前になると角だか貝だかを鳴らしてカタカタという音をさせる。形は錘と似ているからカタツムリ」などは、「語原論というよりむしろ落とし話」。
マイマイ
  • 貝の形、即ちあの巻き方に基づいて附けた名なることは、おおよそ確かである。
  • マイマイが少なくとも「巻く」という語に因みのあることだけは明らか。
  • 「舞舞ひ」(舞を舞う者)のことだとするのは早合点。
デンデンムシ
  • 殻から「出ろ出ろ」あるいは「出よ出よ」という童詞があった。
  • 延宝4年(1676年)「日次記事」に「児童相聚、出出虫虫、不出則打破釜云爾。」とある。
  • デイロ・ダイロという方言も同じように「出ろ」という命令形から。

補足1. マイマイの語源は「舞ひ」であるとする説が「ざつがく・ザツガク・雑学!」というウェブサイトにて紹介されている。

1.マイマイは「舞ひ」から来ているとする説。(廻いとする説も)
梁塵秘抄(りょうじんひしょう:平安末期の歌謡集)」には、次のように載っています。
 舞へ舞へ蝸牛(かたつぶり)、舞はぬものならば、馬の子や牛の子に蹴(くゑ)させてむ、踏み割らせてむ。  
 まことにうつくしく舞うたならば、華の園まであそばせむ

補足2. カタツムリのカタは干潟の「がた」、つまり陸という意味であるという説が「+α平塚市民情報誌」というウェブサイトにて紹介されている。

「かたつむり」の「かた」は干潟(ひがた)の「潟(がた)」のことです。「潟(がた)」は、潮が引いて干上がった土地の事ですから、〔陸:おか〕のいみがあります。「つむり」とは、「つぶり」または「つぶら」ということばがかわって、「つむり」になりました。「つむり」の「つむ」とは、「ツブ」のことで〔まき貝〕のことをいいます。