蝸牛の歩み

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インターネット法律相談所

サーバ管理やウェブサイトの運営をする際に気にしなければいけない法律についての本.通信販売,オークション,著作権個人情報保護法不正アクセスなどについて,事例を挙げて解説してある.以下,自分が関わっているMOMOについて検討してみる.直ちに利用規定を改定しなければならないとは思わないのでMLには流さないが(流さなくとも関係者はこれを読んでそうな気もするし),頭のどこかにとどめておく必要がありそうだ.

消費者契約法

事業者の責任を全面的に免除する規約は,消費者契約法で無効と定められているという.

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項
消費者契約法

では,MOMOは大丈夫なのだろうか?

登録データに起因もしくは関連して当該登録者に生じたすべての損害、またデータもしくはデータベースを閲覧および使用することによって利用者・登録者に生じたすべての損害に対して、管理組織は一切の賠償責任を負わないものとします。
(中略)
管理組織は、登録データおよび関連する情報について、恒久的な保存を保証しません。これらのデータファイルを管理組織が紛失もしくは破損することで利用者・登録者に生じたすべての損害に対して、管理組織は一切の賠償責任を負わないものとします。

動物行動の映像データベース利用規定

まず,非営利団体であるところのMOMOの管理組織が事業者なのかが気になったので調べてみた.

この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
消費者契約法 第2条2項

MOMOの管理組織も,「その他の団体」なので,どうやら事業者になりそうだ.ちなみに事業とは

一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行
経済企画庁編「逐条解説消費者契約法

だそうだ.

次に不法行為とは何ぞやということだが,「故意・過失により他人に損害を与えること」らしい.MOMOの場合はデータを紛失・消去した場合に「損害を与える」ことになるかよくわからないが,まあそういうこともあるだろう.

そして,MOMOの利用規程の「すべての損害に対して、管理組織は一切の賠償責任を負わないものとします」という文言は,事業者の責任の全てを免除する条項にあたるため,この契約は無効である,となりそうだ.

個人情報保護法

MOMOでは映像の登録に際して個人情報を取得しているが,この際利用目的の通知が義務づけられている.

第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/houritsu/index.html

本書によれば,会員登録はそれ自体契約であるから,2項が適用される.従って,現在は登録に際し「なお、ここで入力していただいた個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。」とのみ記載しているが,必ず個人情報の利用目的を読んだ上でないと登録できないようにしなければならない.